一味違った楽しみ方
学名を細かく見る
はじめに…二名法とさらに細かい分類

学名の基本は属名(属)+小種名(種)で記載されます。これは「二名法」と呼ばれ、この世界共通の命名法はリンネというスゥエーデン博物学者によって作られました。しかし、植物の種類は膨大で多岐にわたり、それだけでは特定できない場合も数多くあります。そのような場合は種をさらに細かく、亜種・変種・品種に分けます。ややこしいのですが、種として独立させるほど大きくないけれども色々な点で違いがあるということです。
 言い換えれば属という大きなくくりがあってその下に種という分類があります。さらにその下に亜種、変種、品種と呼ばれるような分類があるということです。
 少し違うのですが小説などで、第一部・一章・一話などと分類するのに近いのではないかと思います。

それでは亜種、変種、品種それぞれについて軽くふれておきます。この3つは基本的な種としては同じですが、その基本的な種とどの程度相違点があり区別できるかなどで3段階にレベル分けされると思ってください。区別というのは形態であったり、地理的なものであったりと判断基準はたくさんあります

亜種…種として独立させるほどのことはないけれども変種と言うには違いが多いものを指します
変種…基本的な種とたいして違いはないけれど、地理的な分布や生理的な形態で(基本的な種と)はっきりと区別できるもの
品種…基本的な種とほぼ同じだが、形態などで1〜2点ほど基本種と区別できる点があるもの
 

学名(種名)=属名+種小名

学名での植物の名前(種名)は属名と種小名の2つから構成されています。
たとえば普段私たちがキキョウと読んでいる花(植物)を学名で表すと
Playtcodon
 grandiflorus 【プラティコドン グランディフロラス】
という名前になります。

細かく見ますと…
Platycodon が属名でgrandiflorusが種小名になります
属名というのはグループ名、人の名前で言うところの「名字」のようなものと思ってください。
種小名というのはその植物の特徴を表す名前です。

ですから、属名と種小名をふまえた上で説明すると
Platycodonというグループに属する、grandiflorusという特徴を持つ植物、それが「キキョウ」ということになります。

わかりにくいのでそれぞれの単語を日本語にしてみましょう
Platycodonというのは「広い鐘」という意味で釣り鐘のような形の花を咲かせるところに由来しています
grandiflorusとは「大きな花」という意味です

ポイント

キキョウの学名(種名)=Pratycodon(属名)+grandiflorus(種小名)

Platycodonというグループに属する、grandiflorusという特徴を持つ植物

広い鐘のような形をした花を咲かせるグループに属する大きな花をもつ植物

広い鐘の形をした大きな花の植物

いちごの学名を調べてみよう

キキョウの反復になりますが、身近な植物「いちご」の学名を調べてみましょう。今回はインターネットでの検索と手持ちの本で調べてみますが、インターネットだけ・本だけでも十分に調べることができると思います。
グーグルで「いちご 学名」と入れて検索してみました。一発、出てきました

Fragaria.×ananassa 【フラガリア アナナッサ】
「×」は交雑を意味します。また、いちごにもいろいろと種類や系統がありますが、ややこしいのでそのあたりのことは今回はあえて無視します。

この場合はFragariaが属名でananassaが種小名です 。
ちなみに一般的に属名の頭文字は大文字で表します

それではそれぞれの名前の意味を見ていきましょう。本を調べます…、たまには辞書を引くのもアナログ的で楽しいものです。えーと


Fragaria
=香る・香りがよい
ananassa=パイナップルのような果実

ということは香りがよいパイナップルのような果実を付ける植物=いちごということになります。
甘酸っぱい良い香りがしますね。しかし、パイナップルに似ているとはなんぞや、と思われるのではないでしょうか。
少し補足しますとパイナップルもいちごも集合果実という形態の果実で外見の見た目はともかく生態上でというか、そういう意味で「似ている」という意味だとお考えください


まとめ…学名は体を表す

遠回りしましたが、学名は属名と種小名の2つから成り立っている。2つセットでその植物の名前だけではなく特徴なども表している、ということがおわかりいただけたでしょうか。
学名を理解しようとすれば書いてある言葉が読めなければいまいち面白くはないのですが、自分の身近にあるもしくは興味のある植物の学名を調べてみて、それを日本語に訳してみる…というようなことをしてみるとある程度学名のおもしろさが理解していただけるのではないかと思います。
学名を和訳すると言うことはその植物の特徴や性質を少し理解する、ことにつながるからです。少し主観的な考えかもしれませんが、「昔の人は上手に名前付けたなー」とか「特徴をよくいいあらわしているなー」というふうに「へえ」と少し感心できればそれだけでもその人は学名のおもしろさを十分理解していると私は思います。
調べ方は、今あなたがこのページを見ているようにインターネットや図鑑などがあります。図鑑にも色々種類がありますので、一概にどれがよいということはできませんが、本格的に調べるのであれば「牧野植物図鑑」というすごく分厚い図鑑が役に立ちます。植物の図鑑では大御所といっても良いもので大概の図書館に所蔵していると思います。
本来の学名の本文から離れているかもしれませんが、学名にはそのような楽しみ方もあるのだということを広く知っていただきればと思います。

総まとめ

身近な植物の学名を調べてみて日本語にして解釈してみると

その植物の特徴や由来などがわかる