ヤサシイエンゲイ

ファレノプシス(コチョウラン)の育て方

ファレノプシスラン科 学名:Phalaenopsis 用途 鉢植え
難易度 バー バー バー バー バー(ややむずかしい)

耐寒性 バー バー バー バー バー(よわい:10℃以上)

日本ではコチョウランの名前でやや高級な鉢花として知られています。自生地は昼夜の気温差が大きく高温多湿な森林内で、風通しのよい樹木の高い位置にある枝や幹に根を張り付かせて生活します。

栽培カレンダー
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
開花期
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植え付け
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肥料
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季節・日常の手入れ ポイント
支柱立て 簡単な支柱

花が咲くと花の重みで花茎がだらしなく下に向くことがあります。そうなると見栄えも悪くなるので、気になるのであれば支柱を立てるようにしましょう。花茎が倒れた場合は、先端をカギ状に折り曲げて花茎を引っかけるような簡単なものでよいでしょう。

きっちりとしたい場合は、花茎が伸びてくるにつれてビニタイなどで支柱にゆるく結わえいって、徐々に形を作っていきます。花茎は伸びながらも太くなっていくので、ぴっちり締め付けると都合が悪いです。あくまで余裕があるようにゆるめに留めましょう。また、花茎の先端は軟らかくて折れやすいので、やさしく扱ってください。クリップのようなものを使って留める場合、茎を挟み潰さないように気をつけましょう。花が咲いてから支柱で結わえる場合、強引に曲げないようにしましょう。

花後の処理

花が枯れてきたら花茎を切り落とします。このとき花茎を株元から切り落とさずに先端から3分の1くらいの場所で切り落とすと花茎の節から再び新しい花茎が伸びて2番目の花が咲きます。3月頃にこの作業を行うと2番花は7月ころに咲きます 。

しかし2番花を咲かせると生長スタートが遅れて、翌年は花が咲かなくなるということもあります。その年に植え替えをする予定の株や、株自体がまだ小さく今年始めて花を付けた株は、株を大きく生長させることを念頭に置いて、2番花を咲かせないように花茎を切り落としてしまいましょう。

①花茎を切る ②新しい花茎が伸びる

日当たり・置き場所
葉焼け冬以外は直射日光には当てないようにしましょう。春から秋は充分に気温が保てる場合は屋外に出しますが、樹の下など明るいけれども直射日光の入らない場所で育てます。特に真夏の日射しは強烈で葉が焼けてしまいます。屋外の明るい場所なら充分に育つので、日の直接当たる場所に置く必要はありません。強光線は苦手ですが高温自体には強く、35℃くらいまでなら元気に育ちます。

また、コチョウランは風に当てるととてもよく育つので、春から秋の生育期は風通しのよい日陰に吊して育てるのが一番よいです。

秋の置き場所

冬から春咲きのコチョウランは18℃以下の気温に30日前後当たると花芽を作る性質を持ってます。寒さを考えると秋は早めに室内に取り込みたくなりますが、涼しいくらいの気温にある程度さらしてから取り込んだほうが、花芽も作られやすくなります。

冬の置き場所

冬は多くの種が花芽を出して、春にかけて開花します。単に冬を越すだけなら、たいがいの種は10℃以上あれば大丈夫です(高温性で15℃以上必要な種もあります)。10℃を切ると葉っぱが黄色くなって付け根から落ちることがあります。冬は葉焼けの心配もないのでよく日に当てます。

花茎が伸びて開花するには15℃以上の気温と高めの湿度(70%~80%の湿度)が必要です。ただ、15℃を切っても花茎の伸長がいったん止まるだけで、10℃あれば枯れることはないです。その場合、春に暖かくなったら再び花茎が伸びはじめ、遅くても初夏に開花します。ただし、つぼみが付いた状態で12℃以下になると低温障害でとせっかく付いたつぼみも黄色くなって落ちてしまうので、その点は気をつけましょう。つぼみは乾燥もよくないので、暖かい日中に霧吹きなどで水をかけてあげます。

まとめると、枯れないようにするには10℃以上、花茎を生長させたい場合は15℃以上を目安にしてください。夜間の冷え込みには注意して、段ボールをかぶせるなどの工夫をしましょう。

水やり・肥料

春から秋の水やり

5月~9月の生育時期は植え込み材料を指で触ってみて乾いてきているようならたっぷりと水を与えるようにします。乾燥には比較的強いので、水のやり過ぎによる過湿には気をつけましょう。過湿になると根が腐って株が著しく衰えます。それなら、むしろ乾いている方がましです。特にプラスチックやビニールポットに植えている株は真夏でも存外に乾かないので、水のやり過ぎには注意です。

冬期は植え込み材料が乾くのも生育期に比べると時間がかかりますので水やりの回数は自然と少なくなります。栽培温度が低ければ水は控えめにします。植え込み材料の表面が乾いて数日経ってから水を与えるようにします。葉っぱが厚くて水をある程度蓄えているので、かなり乾燥気味でも枯れることは少ないです。温室で加温して栽培する場合は生育期と同様の水やりを行います

肥料

根の先端肥料は固形のものよりも液体肥料の方が水やり代わりに行えるので便利です。肥料を与え始めるタイミングは新しい根がたくさん伸びてきた頃です。ただし春早くから新しい根が伸びてきた株に関しては気温が充分に上がる5月にはいってから与えます。5月にはいってもまだ新しい根が伸びていないものはでてくるまで肥料を与えてはいけません。根は株元からたくさんでてきて鉢の外にもいっぱい伸びてきます。地上部分に伸びている根の先端を見てください。もし緑色がかった色をしていればその根は生長している証拠です。生長の止まった根は先端まで白色です。肥料は1週間に1回1500倍に薄めたものを9月いっぱいまで与えます。夏以降はリン酸が多めの肥料を与えるとしっかりとした花芽が出やすいです。

用土
水ゴケを使用するのが一般的です。乾燥させてありますので使用する直前に必要な分だけとり、充分水を含ませておいて水気を軽くしぼってからほぐして使用します。

バークチップやヤシ殻チップなども適してます。特に水やりが好きでこまめに与えるクセのある人は、水はけと通気性のよいこちらのほうが育てやすいです。

植え替え・植え付け
植え替えの適期は5~7月です。冬は寒くて生長しないし、真夏は暑さで生育衰えることがあるので避けます。水ゴケがが黒っぽくなり傷んできた場合に植え替えを行います。植え替えはだいたい2年~3年に1回くらいが目安でしょう。根が盛大にはみ出て鉢外に伸びまくることがありますが、それは非常に元気に育っている証拠なので、そのまま植え替えない方がよいです。

根が空気を大変好みますので通気性の良い素焼きの鉢を使用するのが一般的です。陶器でもうわぐすりのかかっているもの(贈答用の化粧鉢など)やプラスチックのものは見栄えはよいですが、空気を通さずに乾きが遅く、過湿になりやすいです。水やり管理に自信があればいいですが、できれば避けた方がいいです。

鉢の底に軽石や鉢かけを多めに入れるのは通気性をよくするためと、そのままの鉢の大きさだと水ゴケがたくさん入りすぎて株に対して水ゴケの量が多くなりすぎて多湿になるからです。ヤシ殻チップなどを使う場合は鉢かけを入れなくても大丈夫です。

●植え替えの手順●
①株の整理
②水ゴケをまく
③さらに水ゴケ
④鉢の準備
寄せ植えでもらったものの場合も…
⑤植え付ける

ふやし方
高芽一般的にはふやすことができないと考えた方がよいでしょう。品種によってはまれに花茎上に芽(高芽)が出てきます。 この芽が大きくなり葉が3枚くらいに生長した頃に切り離して鉢に植え付けて育てます。高芽は植え付けてからだいたい2~3年で花の咲く株に成長します。

かかりやすい病害虫
病気 軟腐病/害虫 ナメクジ カイガラムシ

軟腐病は高温多湿の環境で発生します。主に株の付け根に発生し暗い緑色の斑点が広がっていって株が腐ってその後葉も黄色くなって枯れてしまいます。殺菌剤を塗布するなどして被害を抑えますが、ひどくなると回復しづらいです。風通しを良くして蒸れないようにしましょう。

ナメクジは新芽は花茎、花などの軟らかい部分を食害します。誘殺剤などを用いて早期に駆除します。 カイガラムシは葉について吸汁して弱らせます。殺虫剤もありますが、物理的にこすり落とすのが確実です。

葉っぱから少しべとべとした露のようなものを分泌することがあります。この露を目当てにアリが集まってくることがよくありますが、株自体に悪さはしないようです。ただ、通気性と湿度がよいのか、鉢内に巣を作ることもあります。そういう場合は、鉢ごと水を張ったバケツにドボンと浸けるなどして追い出します。

まとめ 

比較的生長スピードはゆっくりで、1年に出てくる葉っぱは1枚~1枚半程度です。春~秋の間に新しい葉っぱが1枚以上増えたら、たいがい晩秋~冬に花芽を付けます。日本の自然環境下では6月~9月の蒸し暑い時期が最も元気に生長する時期です。この期間の肥料と水、置き場所(風通しや日射し)が翌年の開花を左右します。

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