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Topページランの基礎知識 もくじ

9. ランの育て方 どこから手を付ければいいの?

育てるポイント

植物の栽培に、正しい方法やコツはありません。それは、植物それぞれに個性があり、同じ季節でも気候や環境によっても、生長具合が変わってくるからです。

と言っても、はじめは何からすればよいか、わからないものです。そこで、わからないなりに「ランを育てる上で、とりあえず守るべきポイント」をいくつか挙げてみたいと思います。最初に言ってしまうと、冬越しと夏の遮光の2つが最大のポイントです。まずこの2つについて見ていき、水やり、肥料などの基本も説明していきたいと思います。

ランの種によって性質が大きく異なるので、細かい栽培方法は植物別のページにゆだねます。育てていくと、これから挙げるポイントは何となくわかってくるようになります。そして、作業をやるべきか、やらなくていいかも判断できるようになるでしょう。その先は、トライアンドエラーで自分の栽培環境での育て方を見つけてほしいと望みます。

冬越し

セッコクやフウラン、一部のシンビジウムなど凍らせなければ越冬するものもありますが、基本的に耐寒性は弱いと考えた方がよいです。

特に洋ランと呼ばれる部類は往々にして耐寒性は弱いです。種によって耐寒性は大きく異なるのですが、室内やベランダに引っ込めるなど、早めの防寒対策が必要です。

室内温室や加温装置(ヒーターなど)があれば、寒さによる失敗は少なくなり、栽培の幅も広がりますが、最初からそこまでやる必要はないでしょう。

慣れてくると、どの程度まで大丈夫かわかるようになりますが、全くわからない場合、冬は室内に置いたほうがよいでしょう。

遮光

遮光遮光とは日除けのことです。ランは強い日射しに弱いものが多く、真夏は直射日光を避けるのが基本です。強い日射しに晒されると、最初に葉が黄ばんで、次に茶色く枯れる「葉焼け」を起こします。コチョウランなど、ただでさえ葉の枚数が少ないランは、葉焼けにより貴重な葉が枯れてしまうと、てきめんに生育が衰えます。

日射しを遮るためには「遮光ネット」や「寒冷紗」を用います。役割としてはレースカーテンやブラインドのようなもので、差し込む光の量を調節するものです。目の細かさでいくつかの種類があり、当然ながら、目の細かいものの方が、より日射しを遮ります。50%や30%など、遮光できる目安が記載され、用途に応じて使い分けたり、重ね使いします。

ランの種によって好む日射しの度合いは異なりますが、多くは50%遮光で大丈夫です。ネットを張ると、風通しが悪くなりがちなので、ネットと植物の間を充分とるなどの工夫をしましょう。それほど鉢数がないばあいは、わざわざ遮光ネットを用意する必要はなく、明るい日陰に移動させればよいです。

生育期と休眠期

生育サイクルランの生長段階は大きく2つに分けられます。ひとつは新芽を伸ばして葉を広げ、活発に活動している生長期(栄養生長)、もうひとつは茎葉の生長が止まり、花芽やつぼみが生長する休眠期(生殖生長)です。葉の生長がストップして、バルブが大きくふくらむ時期を、充実期と言うこともありますが、ここでは生育期の中に入れます。

季節的に生長期は春~秋、休眠期が冬というパターンが多いです。生長期に一生懸命大きく育って体力を蓄え、その力で休眠期に花を咲かせるのが一般的な生育サイクルです。

水やりや肥料は、生長期と休眠期で違ってきます。生長期はぐんぐん大きくなるので水や肥料は欠かせませんが、休眠期は基本的に生長しないので、それらをあまり必要としません。

植え替えなどの作業も生長期のはじめに行うのがふつうです。生長段階を把握するのは、ランを栽培する植えで大事なことです。

どこで生長と休眠を見極めるかですが、とりあえず、新芽や葉っぱが伸び始めたら、生長期のスタートです。根の先端が緑色をしているようなら、生長している証拠なので、そこで判断してもよいでしょう。生長が止まって、バルブのあるものはそれ以上太らなくなり、根も伸びなくなったら休眠期です。花芽が出てきているようなら、多くのランは生長が止まって休眠期に入っています。

水やり

ランはあまり水切れで枯れることはありません。特に着生ランはバルブをもっていたり、葉が肉厚だったりと、水分を逃さない構造をもっており、乾燥に強いです。

生育期は植え込み材料(水ゴケなど)が乾いたらたっぷりと与えます。ヘゴづけなどの場合は、毎日水をかけます。新芽のが伸びて生長している時期は気持ち多めに与えた方がよく育ちます。

休眠期は、水をほとんど必要としません。ときどき霧吹きで全体に水をかけたり、バルブにシワが寄ってくるようなら湿る程度に少量水を与えます。暖房で乾燥するような場所はよくないので気をつけましょう。水分が奪われて弱ったり、つぼみが落ちることがあります。

肥料

ランは、わずかな肥料でも効率よく吸収して栄養に出来ます。ですから、肥料はあまり必要としません。草花に与えることに比べると微細な量です。しかし全くないのと少しあるのではやはり生長が違うので、大切なものです。

生長期のはじめから、ゆっくり効く固形肥料やごく薄い液体肥料を定期的に与えます。そして、生長期の中頃(だいたい秋口くらい)で肥料はやめます。バルブのあるタイプは、バルブが太ってきたら肥料をストップするとよいでしょう。これは、休眠期まで植物の体内に肥料分が多く残っていると、花芽を付けないことがあるからです。早めに切るのは、生長期で植物体内の肥料分を使い切ってしまうようにです。

花の咲いている時期は、肥料をあげたくなりますが、休眠期で根の生長が止まっています。ですから、肥料は吸収しません。かえって根を傷める結果になり逆効果です。

病害虫

病害虫は比較的少ない方です。一番怖いのが、ウイルス病そして、軟腐病、やっかいなのがナメクジです。

ウイルス病はハサミなどの器具から感染することが多いです。葉に黒い斑点ができたり、かすり状に色が抜けたりして、正常に育たなくなります。この病気の怖いところは、他の株にも感染することです。薬剤などの対処法がなく、かかってしまった株は処分するか隔離栽培するしか方法がありません。ウイルス病と思っていたら、単なる葉焼けだったり、生理現象で葉色が悪くなっているだけと言うこともあり、症状から判断するのが難しい病気です。

軟腐病は、名前の通りで株が腐る病気で、細菌によって引き起こされます。葉の間や新芽などに水がたまると、発生しやすい病気です。水がたまってしまった場合は、逆さにして水を切ったり、ティッシュに水を吸わせます。かかってしまった場合、抗生物質を含んだ殺菌剤で発生を抑えることが出来ます。

ナメクジはつぼみや花びら、新芽など、やわらかい部分を食べてしまいます。誘殺剤や忌避剤をまいて、対処します。

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