2. タネの発芽と条件
発芽に必要な条件
前ページではタネから育てる植物の中でも最もポピュラーな「一・二年草」について、さらに「秋まき」「春まき」というふうに、植物の種類によってタネをまく適期があることを説明しました。
次に、どういう環境や条件でタネが芽を出すのか「タネの発芽とその条件」と、タネを知って貰うため「タネの性質」についてを見ていきましょう。タネの性質を理解すると、まいたタネがもし発芽しなかったときも、原因が少しわかってくると思います。
発芽に必要なもの
タネの発芽についてまず知ってほしいのは「発芽の3条件」です。タネは「酸素」「水」「温度」の3つが揃ってはじめて発芽する環境が整います。これが「発芽の3条件」です。植物の種類によっては他にも条件が付け加えられるのですが、前提としてタネの発芽に必要なのはこの3つです。
タネをまいて水をやりました。これで「水」そして「酸素」の条件は整います。「酸素」は空気中にあり、こちらがやる必要は無いものです。3つめの「温度」は「タネがもっとも発芽しやすい温度=発芽適温」のことです。単純なように感じますが、タネまきで一番失敗しやすいのはこの「温度」の条件です。それについては次の項でくわしく見ていきましょう。ここでは、発芽には3つの条件が必要と言うことだけ憶えてください。
発芽適温
タネが発芽するのに適した温度はおおむね20℃前後とされます。実際は植物によって差があり、15℃くらいが発芽適温の植物もあれば、25℃程度必要なものもあります。発芽適温は正確に言うと、タネをまいた地面の温度→地温のことを指すのですが、大差が無いのでここでは「温度=気温」として説明します。
たとえば、アサガオは発芽適温がおよそ20℃~25℃で、発芽には比較的高い温度が必要です。もし、気温が10℃しかない時期にタネをまいても「酸素」「水」の条件が揃っていても「温度」が合わず発芽に至りません。逆に、発芽適温が18℃前後のパンジーを気温が30℃の時期にまいても「温度」が高すぎ、条件が合わずに発芽しにくいです。コスモスのように発芽適温に幅がある植物は、春~初夏までタネをまくことができます。
アサガオのタネまきは5月以降がまき時、と言った目安は「まき時→温度が発芽適温になる時期」ということです。気候や地域によって同じ月でも温度は大きく異なります。まき時は天気予報の最高・最低気温とにらめっこして決めたほうがよいでしょう。昔の人は暦(節季)のほか、八重桜が散る頃、のように季節の訪れから判断して農作業をしていました。
それぞれの植物の発芽適温についてはタネ袋に記載されている情報などを参考にしてください。適温のタイミングを大きく外すと発芽しません。また、気温は地域や季節によって違うので、まき時は自分で判断する必要があります。これらのことから、発芽3条件のうち「温度」が一番失敗しやすい条件と言えます。
発芽と光
「光」が発芽の条件になるタネも多くあります。ただ、必須とは言えないので3条件とは別に考えます。光の条件は「光が当たる」と「光が遮られる」の2パターンがあります。
「光が当たる」はそのまま、タネが光を感じることで発芽の条件が整います。3条件が揃っていても「光」がなければ発芽しません。このような性質を持つ種子を園芸では好光性種子、植物学では光発芽種子と呼びます。代表的な植物にペチュニア、ナデシコ、レタス、シソなどがあります。
「光が遮られる」は、暗闇にすると発芽の条件が整い、光に当たると発芽が抑えられます。全くの暗闇というより、「暗いほうが発芽しやすい」程度に考えてください。園芸では嫌光性種子、植物学では暗発芽種子と呼びます。代表的なものに、ケイトウ、ヒャクニチソウ、トマト、キュウリなどが知られています。
具体的な方法として、光好性種子は播いた後に土をかぶせない、もしかぶせるとしてもごく薄くします。嫌光性種子は播いた後に覆いをする、土を厚めにかぶせるなどして対処します。
低温と発芽
園芸で栽培される一・二年草の中にはあまりありませんが、植物全体を見ると低温が発芽の条件となるタネもあります。低温というと抽象的ですが、発芽適温より低い気温に一定期間あうことで発芽条件が整うと言う意味です。その後、適温まで気温が上がると発芽するので、正確には寒暖差に反応すると言えます。
自然のなかでは、秋にできた種子が冬(低温)を越して春(気温の上昇)に芽を出すといった感じです。具体的な植物に、リンゴ、モモ、ハナミズキ、サクラソウなどがあります。