11. タネを採って保存する
タネと親と子孫
栽培していると、花が咲いて、実を結び、やがてタネができます。タネができにくいもの、もともとできないあるので一概には言えませんが、それが自然な流れです。
来年もまきたい場合は、できたタネを採って保存しておいても良いでしょう。ただし、親と同じ性質のものができるとも限りません。いざ、タネを採ってまいても、親とは違うものが育ってがっかりすることもあります。具体的には、花が小さくなったとか、生長が芳しくないとか、草丈のバランスが悪いとか、そんなことです。
F1種と固定種
特に市販のF1種と呼ばれるものは、タネができても、親と同じ性質のものはできません。親と同じ性質のものが育てたいなら、毎年同じタネや苗を購入するのが確実です。
逆に固定種と呼ばれるものは、自家受粉で親と同じ性質のタネができます。ただし、同じ植物の異なる品種を植えていると、お互いに交雑して雑種ができることもあります。ですから、ちゃんとするなら同じ植物の違う品種は隔離して栽培する、開花時期以降は株を寒冷紗などで覆ってしまうなどの作業が必要です。
「おもしろい」からはじめて見る
ここまで見たとおり、親と同じ性質のタネを採ろうとすると、F1種は無理で、固定種でも手間がかかります。そこまでちゃんとする人は、育種家の領域に踏み込んでいると言っても大げさではないです。そこまでいかなくても、たまたま実ったタネをまいてみるとか、親と異なる花や性質ができるという結果が、「おもしろい」と感じるなら、自分でタネを採ってまくのはおすすめです。
園芸的に優れた面(花がたくさん咲く、病気に強く生長が早いなど)から考えると、優れたものはできないことが多いです。ただ、親とは違う色や姿の花が咲いたとき、植物の中に個性や多様性を感じられるのではないかと思います。
タネを採る
植物によって、タネのでき方は違います。かなりざっくりですが草花の場合、花後に実がふくらんできて茶色く熟してきます。そして、そのままにしておくと弾けてます。そして、弾けたときの勢いや風の力を使ってタネをまき散らします。
弾けてしまったら元も子もないので、その前に採るのが基本です。具体的には、弾ける前に実を紙袋などに入れて乾燥させます。そうすると弾けてもタネが飛び散りません。
ものによっては実を採るタイミングが難しいので、何度もチャレンジしてみてください。例えばパンジーは実が熟しても、緑色のままあまり色が変わらないです。朝に大丈夫と思ってほおって置くと、夕方にはタネが全部弾けてしまっていることもあります。
アサガオのように弾けないものは実は採らず、株に付けたままときどきチェックして、皮がかさかさに乾いたら中のタネを取り出します。実が大きくなってきたら、ヒモなどを結えて目印にし、こまめにチェックしましょう。タネが弾ける前にとればよいので、創意工夫で色々やってみると良いでしょう。
タネを保存する
タネの保存に大切なのは、「低温」と「乾燥」です。チャックのできるビニール小袋などに入れる場合は、よく乾燥させたあとが良いです。封筒やお茶パックに入れて、涼しい日陰に置いておくと適度に乾燥してくれます。水濡れは厳禁です。袋には植物の名前や品種、採種年月を明記し、あとは光の入らない、密閉できる容器(茶筒など)にいれて冷暗所で保存します。通気性の良い袋に入れて貯蔵する場合は、いっしょに乾燥剤も入れておくと良いでしょう。スペースがあるなら、冷蔵庫の野菜室などが最適です。
タネと寿命
タネには寿命があるので、適切に保存していても発芽率は年月の経過とともに悪くなっていきます。植物により差があり、アスターやニチニチソウなどは一般的には短命なタネと言われています。どちらにしても、採取したタネは、適期になったら早めにまくのがよいです。
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