まっすぐにすっくと伸びる
ユリノキ
科名:モクレン科学名:Liriodendron tulipifera別名:ハンテンボク チューリップノキ原産地:北アメリカ中部樹高:20m-30m開花期:5月-6月難易度 (そだてやすい) |
ユリノキとは
葉っぱ(春の新葉) 開く前の葉っぱ 花 タネ |
北アメリカ中部原産の落葉樹で、生長すると30mもの高木になります。すくっとまっすぐ伸びる樹形が非常に美しく、日本の気候にも合っているので、公園や学校などに植えられたり、街路樹としても広く利用されます。明治初期にタネが入ってきてそこから苗木を作り、明治8年に新宿御苑に植えられたのが日本で最初のユリノキとされます。
葉っぱは上半分がぱっつんと切り落とされたような、先端のないおもしろい形をしています。長さは10cm~15cmで基本は左右対称で、新葉はパタンと2つ折りの形で出てきます。秋には黄色く色づいて、冬は落葉します。タネは薄っぺらく、浅いボートのような形をしています。
主な開花期は初夏で、カップ型の花が枝先に1輪咲きます。花色は外側が緑白色、内側は全体が緑黄色で付け根に近い部分がオレンジ色になります。花は10年生くらいから咲き始めます。非常に美しい花ですが、高い位置に咲くことも多くて気づかないこともよくあります。花の底にたまるくらいたっぷりの蜜を出し、アメリカでは上質の蜂蜜がとれる蜜源としてよく知られています。
木が大きく育つと樹皮が非常に分厚くなり、熱や火に対する耐性が増します。軽さ(比重)の割に、非常に優れた強度をもち、材もまっすぐで扱いやすくて美しいので、材木として家具などにも広く利用されています。
名前の由来
ユリノキの他、チューリップノキ、ハンテンボクなどの別名があります。ユリノキの名前は属名のLiriodendronに由来するとされます。Liriodendronはギリシア語のlirion(ユリ)とdendron(樹木)の2語を合わせた単語です。花の形もしくは構造からの連想と思われますがユリっぽくはないです。
チューリップノキはカップ状の花がチューリップのように見えるところに由来します。学名の種小名tulipiferaもチューリップの意です。英語のTulip tree、ドイツ語のTulipenbaum、フランス語のTulipierなど、世界広くでチューリップ由来の名前が付けられています。ちなみにアメリカでは、Yellow poplar(イエローポプラ)の呼び名も一般的で、日本でも材木としてはこの名前がよく使われているようです。
アメリカは原産地で古くから知られているだけに、ホワイトウッド、サドルツリー、カヌーウッド、バスウッドなど、他にも色々な呼び名があります。
属名にユリ、種小名にチューリップと花の名前が2つも入っているおもしろいのかおかしいのかわからない学名です。
ハンテンボクは左右対称の葉っぱが袢纏(はんてん)のように見えるところから付いた名前です。
品種
樹形のまとまる品種や、変わり葉種がいくつか知られています。ファスティギアツム〔’Fastigiatum’〕
樹形が円柱状にまとまります。
オーレオマルギナツム〔’Aureomarginatum’〕
葉の縁が黄色くなります。
メディオピクツム〔’Mediopictum’〕
葉の中央に、クリーム色や黄色の模様が入ります。
育て方
栽培カレンダー1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 |
開花期 |
植付け |
剪定 |
日当たり
陽樹なので、日当たりの良い場所でよく育ちます。半日陰の場所でも生育しますが、生長スピードは遅くなります。
耐寒性はありますが、小苗は頂点の芽が寒さでやられることがあります。そうなっても腋から芽が出てきて木自体は枯れませんが、幹が直立した美しい樹形になりません。寒冷地で小苗を植え付けた一年目の冬は頂点の芽を守るように防寒を行いましょう。
水やり・肥料
植え付けて根付くまではたっぷりと水を与えますが、その後は必要ありません。肥料は特に与えません。
かかりやすい病気・害虫
特に見られません。
植え付け・用土
湿り気のある土壌を好み、乾燥地では不向きです。腐葉土や堆肥をたっぷりと混ぜ込んで、土の保水性を高めておきます。植え付け後はぐらつかないようにしっかりと支柱を立てます。直根性である程度生長した木は移植しても根付かないので、植える場所は十分考えます。植え付けは落葉期に行いますが、厳寒期はできるだけ避けます。
ふやし方
さし木ができないので、タネをまいて育てます。タネは一端乾かしてしまうと吸水しにくくなり、発芽する前に腐ることが多くなります。11月頃に採取したらすぐに播く(とりまき)か、乾かさないように土中などに貯蔵しておき春にまき直します。とりまきの場合、翌春に芽を出します。
ただ、発芽には相当ばらつきがあり、休眠の長い硬実(こうじつ)と呼ばれる種子もたくさんあります。硬実はさらに翌年や翌々年にならないと発芽しません。また、自家採取の場合、中身がなくて発芽する力のない秕(しいな)もたくさんできます。
手入れ
自然樹形が美しいので、基本的に大がかりな剪定は行いません。長く伸びた枝は先端が重くなり、風や雨で折れてしまうことがあります。大きな枝が折れてしまうと危ないので、事前に伸びすぎた枝は先端を1/3ほど切り詰めて置くとよいでしょう。また、小枝が折れやすい樹木ですが、冬を越すとしなやかで折れにくくなります。
大きくなる木なので庭木には適しません。どうしても植えたい場合は、目的の高さに達した時点で梢(頂点)を切り落としてそれ以上伸びないように芯を止めます。芽吹く力は強い樹木なので、特に問題はありません。その後は小枝を切り落としてバランスを整えます。
枝を切る作業は落葉期に行うのが基本で、春に芽を出す直前が適しています。
ポイント
街路樹や公園樹など、十分スペースのとれる場所での植栽が適します。芽吹く力があるので、枝を切ってある程度まとめられますが、現代の住宅事情を鑑みると庭木で立派な木を育てようとするのはあんまり現実的ではありません。