6. ランの選び方 どんな種類があるの? Ⅰ
どんな種類がある?
地球上には25000種以上のランが分布するといわれています。詳しくは「どれだけいる?どこで暮らす」をご覧ください。
それでは、具体的にはどんなものがあるのしょうか。分類体系や個々の解釈によってグループ分けの基準は様々です。ここでは比較的よく流通・栽培されているメジャーなものをざっくりと8のグループに分けます。今回は基本的に生態や形態の近い近縁種同士でまとめました。
()内はラベルなどに書かれる際の「属名の略号」です。「類」と付けているものは、「近縁属も含む」という意味です。☆が付いているものは植物園や展示会でもよく見るので、特に憶えておくと良いでしょう。これに含まれないものは「その他」とします。
グループ | 含まれる属 |
・カトレア類 | カトレア(C.)☆ ブラッサボラ(B.) エピデンドルム(Epi.)☆ レリア(L.) ソフロニティス(Soph.) 等 |
・シンビジウム | シンビジウム(Cym.)☆ |
・デンドロビウム | デンドロビウム(Den.)…ノビル系☆ デンファレ系☆ 等、色々な系統がある |
・リカステ類 | リカステ(Lyc.)☆ アングロア(Ang.) 等 |
・オンシジウム類 | オンシジウム(Onc.)☆ ブラッシア(Brs.) オドントグロッサム(Odn.) コクリオダ(Cda.) |
・パフィオペディラム | パフィオペディラム(Paph.)☆ |
・ファレノプシス類 | ファレノプシス(Phal.)☆ ドリティス(Dor.) 等 |
・バンダ類 | バンダ(V.)☆ アスコセントラム(Astcm.) エリデス(Aer.) レナンセラ(Ren.) リンコスティリス(Rhy.) トリコグロッチス(Trgt.) 等 |
カトレア類
ミユキ |
ランの女王 洋ランはここから一気に始まった
ランの女王と形容されることもあり、花の華麗さとその存在感は群を抜きます。主に中南米原産で樹木や岩肌に根を張り付かせて生育する着生ランです。自生地では低地から標高4000mまで分布します。大きさや開花期は種によってまちまち、花の寿命はおよそ2~3週間です。色は様々ですが単色のものが比較的多く、花の中心にある花びら(唇弁)が立派で目を惹きます。
19世紀前半、ブラジルの採集植物をイギリスに送る際、輸送中の緩衝材に使われていた植物をある園芸家が捨てずに育てたら見たこともない花が咲いた、というのがカトレア栽培の起源です。カトレアの名前はその園芸家カトレイさんに由来します。近縁属にブラッサボラ、エピデンドルム、レリア、ソフロニティスなどがありそれらを含めてカトレア類と言われます。近縁属同士での人工交配が盛んに行われており、自然にない属(人工属)も多数あります。
カトレア類の主な人工属 ( )は略号 | |
ソフロカトレア (Sc.) | ソフロニティス×カトレア |
レリオカトレア (Lc.) | レリア×カトレア |
ブラソカトレア(Bc.) | ブラッサボラ×カトレア |
ソフロレリオカトレア (Slc.) | ソフロニティス×レリア×カトレア |
ブラソレリオカトレア (Blc.) | ブラッサボラ×レリア×カトレア |
ポティナラ (Pot.) | ブラッサボラ×レリア×ソフロニティス×カトレア |
シンビジウム
サラジーン アイスキャスケード |
エリトロスティルム |
丈夫で育てやすい
熱帯アジアを中心として、日本~ヒマラヤ~オーストラリアに分布する半地生ランです。日本、中国原産のものは古くから『東洋ラン』として栽培され、シュンラン(春蘭)は山野草としても親しまれています。縮めて「シンビ」と呼ぶことも多いです。
洋ランでシンビジウムとして扱われているのは主に熱帯アジア原産の大型で花の美しい野生種から改良されたものです。鉢花や切り花などの需要が高く、日本で生産されている洋ランの中ではファレノプシス(コチョウラン)に次いで生産量が多いです。寒さにも強く、日本の気候でも無理なく育てられる種が多いです。
花茎は直立するものと下垂するものがあります。花は一茎に1~多数咲かせ、色は白、紅色、緑などがあります。葉は細長く、茎の基部が肥大します。語源はギリシア語のkymbes(舟形)で唇弁のかたちに由来します。
デンドロビウム
大所帯、仲間なのに違いすぎるその姿
チルシフロルム |
キンギアナム | アンテナツム (ケーンタイプ) |
熱帯アジアを中心に、東は日本、南はオーストラリアやニュージーランドまで分布します。日本には3種が分布し、セッコクは古くから栽培されています。よく、「デンドロ」と略して呼ばれます。
原種(人の手が加わっていない野生種)が1000種を超す大所帯です。花の姿はどの種も比較的似ていますが、花の咲き方や茎葉の形状は変化に富み、草丈2cmほどのものから3m近くになるものまであり「これが同じ属?」と言いたくなるようなものも多いです。しかし、それが魅力でもあります。
園芸ではノビル系、デンファレ系、フォルモサム(フォーミディブル)系、キンギアナム系、ケーンタイプ系などの品種群に分けられます。デンファレは「デンドロビウム・ファレノプシス系」の略ですが、このやたら長い正式名称はあまり使いません。ノビル系やキンギアナム系の一部、セッコクとの交配種は低温にも強くて栽培しやすく、ラン栽培の初歩としてはうってつけです。デンファレは切り花や料理の飾りなどによく利用されています。
語源はギリシア語のdendron(樹)とbios(生活)の2語からなり。樹木上などに根を張って生活するところに由来します。