スイセン

ヒガンバナ科 「す」からはじまる植物 球根植物

スイセン
この植物の育て方
科名
ヒガンバナ科
学名
Narcissus
別名
セッチュウカ(雪中花)
原産地
地中海沿岸 北アフリカ スペイン ポルトガル
大きさ
高さ20cm~40cm
開花期
11月~4月
難易度
★★★☆☆(ふつう)

こんな植物です

春を告げる草花として古くから親しまれています。園芸では秋に球根を植え付けて、春に花を楽しむ「秋植え球根植物」として扱われます。スイセンの仲間はおよそ30種の野生種があり、スペイン、ポルトガルから北アフリカなど地中海沿岸に分布します。

単に「スイセン」というと、古来より日本で野生化しているニホンズイセンを指すことが多かったのですが、今では他の種や園芸品種もひっくるめたスイセン属の総称として使われています。海外の園芸品種などを総称して「セイヨウスイセン」と呼ぶこともありますが、そういう名前のスイセンはありません。

扱いの注意点

点全草に毒性があり、嘔吐や皮膚炎の症状が知られています。葉っぱがニラ、球根がタマネギと間違えられて食中毒を起こすケースがよく見られます。畑などややこしい場所に植えないようにしましょう。

姿・形

球根は鱗茎と呼ばれる形で、断面はタマネギみたいです。大きさは種によってかなり異なり、小さなもので5mm、大きなものは10cm近くになります。

球根から帯や線状の細長い葉っぱを数枚出します。出たばかりの葉っぱは付け根が薄いさやのようなもので包まれています。球根の中心から花茎を伸ばして、その先端に1~数輪の花を咲かせます。たくさんの花を付けるものは「房咲き」と呼ばれます。花茎は10cm~40cmくらいに伸びます。

開花期は早いもので紅葉の頃、遅いものではサクラの花の咲く頃で、種によって幅があります。花姿は千差万別で非常にバラエティーに富みます。基本の花びら数は6枚でそれとは別に「副花冠」と呼ばれる花びらが中心に付きます。副花冠は大きくラッパ状に伸びたり、杯状に広がったりして、スイセンの花の特徴的なものになっています。花色は黄色、白、オレンジが多く、ちょっと変わったものにピンクや緑色があります。

来歴・名前の由来

ニホンズイセンは日本各地の海岸線に群生地があり、名前にもニホンが付くので元から自生する植物と思われがちですが地中海原産で、とても古い時代にシルクロードを通って中国経由で渡来して野生化した種と言われています。室町時代の漢和辞典「下学衆」に「雪中花」などの名前で載っており、それ以前に入ってきていたのではないかとされています。

スイセンの名前は漢名の水仙から来ています。属名のナルキッソスはギリシア語で「麻痺させる」という意味のナルケに由来するとか、ギリシア神話に登場するナルキッソスという美少年の名にちなむなど諸説あります。

イギリスでは古くから園芸植物として栽培や改良が行われており、スイセン(特にラッパスイセン)を総称して「ダフォディル」(daffodil)と呼びます。


代表的な種

〔〕内は学名、N.はNarcissusの略。

日本で古くから親しまれている、いわばスイセンの代表とも言える野生種。

ニホンズイセン〔N. tazetta (subs. tazetta) ver. chinensis〕

ニホンではスイセンの代名詞とも言える種です。花びらは白で副花冠は黄色のカップ型で、小輪で房咲きです。分類上はフサザキスイセンの変種という位置づけです。広い範囲で野生化しており、各地に群生の名所があります。変種名のキネンシスは「中国の」という意味です。

フサザキスイセン〔N. tazetta〕

地中海沿岸や近辺の諸島に分布し、日本や中国で野生化しています。多くの亜種や変種があり、ニホンズイセンもそのうちのひとつです。花びらは白~黄色、副花冠は白~オレンジ色と色幅があります。小輪の房咲きで強い芳香が特長です。種小名のタゼッタは「小さなカップ」の意で、副花冠の形によります。

クチベニズイセン〔N. poeticus〕

スペインからギリシアまで広く分布します。花びらは白で、副花冠は黄色く縁が紅色に彩られ、そこからこの名前があります。一本の花茎から1~2輪の花を咲かせます。種小名のポエティクスは「詩人の」という意味です。古い時代のヨーロッパでは本種が真のスイセンとされており、この花が詩人によりうたわれたからだとされています。

ラッパズイセン〔N. pseudonarcissus〕

イベリア半島やフランスに分布します。花は黄色~白で、副花冠がラッパのように長く発達するのが特長で、様々な亜種や変種があります。一本の花茎から1輪の花が咲きます。種小名のプセウドナルシッサスは「偽物のスイセン」の意です。古い時代は「クチベニスイセンこそ本物のスイセン」とされていたため、似ているけど違うという意味で付いた名前とされます。

キズイセン〔N. jonquilla〕

スペイン、ポルトガル原産で、日本には19世紀中頃に入ってきたとされます。花は鮮やかな黄色で、強い芳香を放ちます。一茎に3輪程度の花を咲かせます。葉っぱは糸状で細長いです。

その他の種

■園芸種の元となっている種(原種)や、よく栽培されているもの。

シクラミネウス〔N. cyclamineus〕

黄色の小型種でスペイン、ポルトガルに分布します。花びらが大きく反り返り、副花冠はラッパ型です。園芸品種のティタ・ティト〔N. Tete - a - Tete〕は鉢花で広く出回ります。種小名のシクラミネウスは花姿がシクラメンに似ていることによります。

トリアンドルス〔N. triandrus〕

花びらが上に反り返り、副花冠はカップ状です。花は下向きに咲きます。花色が乳白色の変種アルブス〔var. albus〕がおなじみで、エンジェルズ・ティアーの愛称があります。その他にも黄花もあります。

■花姿が独創的でぜひ見てもらいたい種。

バルボコディウム〔N. bulbocodium〕

高さ15cm程の小型種です。メガホンの様な形の副花冠が特徴的です。花びらは小さくてあまり目立ちません。花色は乳白色から黄色です。「フープ・ペチコート」の愛称があります。

ビリディフロルス〔N. viridiflorus〕

モロッコやジブラルタルに分布します。花は緑色で、副花冠は非常に小さく、あまりスイセンぽい花姿をしていません。秋に開花する珍しい種です。


園芸品種の分類

イギリス王立園芸協会によるスイセンの園芸分類

非常に多くの園芸品種があります。元となっている野生種などにより、12の部門(うち、1部門は野生種)に分類されます。参考程度に部門名のみを挙げておきます。

その他の画像

1.セイヨウスイセン 2.ラッパスイセン 3.八重咲き 4.ウェリッシュスター(画像:aska) 5.スイセンの芽出し 6.バルボコディウム 7.ティタティト 8.ビリディフロルス

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