パフィオペディラム
- 科名
- ラン科
- 学名
- Paphiopedillum
- 別名
- レディーズ・スリッパ
- 原産地
- 東南アジア インド 中国
- 大きさ
- 20cm~1m
- 開花期
- 種により異なる
- 難易度
- ★★★★☆(ややむずかしい)
こんな植物です
東南アジアを中心とした熱帯~亜熱帯アジアに約70種が分布するランの仲間です。主に樹林内のうす暗い地面に根を下ろしますが、たまに樹の上に根を張り付かせて生活するものもあります。
花の咲く時期は種によって異なります。葉の中心より花茎を長く伸ばし、1本の茎に1輪~多数の花を咲かせます。袋状になる唇弁(花びらの一部)が印象的でユニークです。唇弁以外の花びらのかたちは種によって大きく異なり、だらんと糸のように長く伸びるものもあれば、短くて粗い毛の生えるものもあります。花色は白や黄色、桃色などを基調としますが、斑点や縞模様の入るものも多く、一言では表しにくい複雑さがあります。
全体的には渋い雰囲気で好みの分かれるところですが、他のランにはないオンリーワン的な魅力があります。玄人向けから、手軽に鉢花として育てられる品種まであります。
由来
ギリシア語のパフィア(ヴィーナス)とペディロン(サンダル、上靴)の2語からなり、『ヴィーナスのスリッパ』という意味で、花びらの一部が袋状になるところに由来します。英名の『レディーススリッパ』も同様です。
主な種類
葉はだ円~細長い姿で地際から左右交互に出し、紫色や緑白色の斑点が入るものもあります。草丈は10cmほどの可愛らしいものから1m近くになる堂々とした大型種まであります。 以上のように非常にバラエティーに富んでいるため。葉の色や花の咲き方などの共通した特徴から、原種(野生種)はいくつかのグループ(亜属)に分けられます。ここではざっくりした特長と、該当する代表種を挙げます。正確には染色体数や花粉の質などもふくめて分類しますが、ややこしいので省きます。
1.葉っぱに模様が入る、花びらは薄い、1茎に1輪
デレナディー〔Paph. delenadii〕
ベトナム原産、開花時の草丈は20cm前後です。花色はピンクで唇弁が丸っこく全体的に可愛らしいです。まれに1茎に2輪咲くことがあります。このグループに近い種にミクランツム〔Paph. micranthum〕やアルメニアクム〔Paph. arumeniacum〕などがあります。水はけのよい半日陰が適します。
2.葉っぱに模様が入る、花びらが厚くてロウ質、1茎に1輪
コンカラー(コンコロル)〔Paph. concolor〕
ミャンマー、タイ~中国にかけて分布。開花時の草丈は10cmほどです。花は黄色地に赤紫色のそばかすのような細かい斑点が全体に入ります。基本、1茎1輪ですがたまに3輪くらい咲くこともあります。葉っぱ全体に灰緑色の斑点が入ります。
他にニベウム〔Phal. niveum〕などがあります。このグループは花びら全体に斑点が入るのも特長です。石灰岩地帯に自生するものが多く、特に水はけのよい環境を好みます。
3.葉っぱは緑一色、唇弁の縁が外側に向く、1茎に1輪
インシグネ〔Paph. insigne〕
アッサム原産、パフィオペディラムの中でも代表的かつスタンダートな種で、多くの園芸品種の親となっています。開花時の草丈は25cm前後、花色は黄色で褐色の斑点が入ります。
他にスペケリアーヌム〔Paph. spicrianum〕などがあり、インシグネとともに多くの園芸品種の元になっています。このグループは特に寒さに強くて育てやすいものが多いです。
4.葉っぱに模様が入る、背がく片の幅が広く縦筋模様が入る、1茎に1輪
カロスム〔Paph. callosum〕
タイ、ベトナム原産、開花時の草丈は40cmほどです。花色は深い紅紫を基調としますが、緑色なども混じります。背がく片は白地に紫の縦線が入り、特に目立ちます。
他にローレンセアーナム〔Paph. lawrenceanum〕やダイアヌム〔Paph. dayanum〕などがあります。高温多湿の日陰を好みます。
5.葉っぱは緑一色、1茎に数輪、同時に咲く
ハイナルディアナム〔Paph. haynaldianum〕
フィリピン原産の大型種です。花茎は直立せずに斜め上向きに伸び、40cm前後になります。花弁に大きな紫褐色の斑点が入ります。
他にパフィオペディラムの王様とも言えるロスチャイルディアナム〔Paph. rothschildianum〕やフィリピネンセ〔Paph. philippinense〕、コロパキンギー〔Paph. kolopakingii〕、パリシィ〔Paph.parishii〕などがあります。このグループは雄大で立派な種が多いです。風通し日当たりの良い場所を好み、高温下でよく育ちます。
6.葉っぱは灰色がかった緑、もしくは淡い模様が入る、1茎に数輪、順番に咲く
ヴィクトリア・レギナ〔Paph. victoria-regina〕
スマトラ原産。花茎は弓状の伸びて1輪ずつ長期間にわたって花を咲かせます。花びらは縁が細かくねじれて、毛が生えます。
その他に、リーミアーヌム〔Paph. liemianum〕などがあります。このグループの種はジャワとスマトラのみに分布します。風通しのよい半日陰を好みます。